あらすじ
千葉・房総の海沿いにある療養所で、かつて映画制作に夢中だった高校生・海斗は、一人の少女と出会う。
彼女の名は渚。病と向き合いながら、古いフィルムカメラで日常を切り取る、儚くも芯のある少女だった。
「映画を、撮ってみたい」
叶えたい夢と限られた時間を抱える渚と、かつて夢を諦めた海斗。
ふたりは8ミリフィルムで自主制作映画を撮るという“ひと夏の約束”を交わす。
交換日記のように脚本を綴り、海沿いの桟橋、棚田、ローカル線、祭りの夜を旅しながら、
カメラ越しに見つめ合う時間が、互いの心を静かに溶かしていく。
やがて夏が終わりに近づくころ、渚の体調が悪化し、現像したフィルムの一部も失われる。
それでも、ふたりが共に見た景色は、確かに残っていた。
映写機がまわる病室で、小さな上映会が始まる。
それは不器用でも愛に満ちた、ふたりの青春の結晶だった。
「次は何を撮ろうか?」
「そうね、秋の海も、きっと綺麗よ」
命の終わりではなく、“いま”という瞬間を生き切ること。
ふたりが共に過ごした時間は、8ミリフィルムに焼きつき、永遠になる。