あらすじ

「音羽(おとは)」という名を持つ少女は、もう長い間、声を失っている。 心因性失声症――それは、心が傷つきすぎて、声が出なくなる病。 学校でも、家でも、誰も本当の痛みに、見て見ぬふりをしたまま。 いつしか彼女自身も、本名すら名乗れなくなっていた。 「音羽」ではなく、ただの「音」。羽を失った、自分。 そんな彼女の前に、ある日──かつての幼なじみ・清瀬 澪(きよせ れい)が現れた。 数年ぶりの再会に、音羽は何も言わなかった。言えなかった。ただ、目を伏せた。 けれど澪は、気づいていた。 彼女が、かつて笑い、話し、名前を呼んでくれた「音羽」だということを。 そして彼は、知っていた。 笑うことを忘れた人間の静けさを。 声を失うほどの痛みを。 ――かつて命を絶とうとしたことのある澪だからこそ、 音羽の沈黙が、どれほど重いものか、分かっていた。 誰にも踏み込ませなかった心の中へ、 彼はゆっくりと歩み寄っていく。 声もなく、言葉もなく、ただ寄り添うように。 これは、「声を失った少女」と、「心を閉ざした少年」の、闘いの記録。 つまずきながらも、陽のほうへ。 声なき日々を越えて、世界を塗りかえていく物語。

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カクヨム
カクヨム2025/07/03
  • 現在の作品【受賞・書籍化進行中】音に、音はない