あらすじ

夏休みの午後、立浪悠《たつなみはるか》は、彼女との待ち合わせに遅れ、自転車を飛ばしていた。  焦りと暑さで注意力を失った悠は、信号を無視して交差点に飛び込み、交通事故に遭う。  目を覚ましたのは、病院の白い天井の下。  ――悠にはそれ以前の記憶が、何もなかった。  家族も彼女も友人も"立浪悠《たつなみはるか》"としての記憶が戻ることを願い  「いつもの悠《はるか》に戻って」  そう声をかけてくる。  しかし、記憶を失った悠にとって周囲が求める“悠《はるか》”はもう他人だった。周囲の人々の「過去の悠」に対する期待が、自分を“演じる”ことを強いてくる。事故の前の悠のように振る舞えない自分に、次第に息苦しさを覚えていく。  そんな時、同じ病棟に入院している不思議な雰囲気を持つ少女――小原紫苑と出会った。  「記憶が戻る前のあなたが“立浪悠《たつなみはるか》”さんだとしたら、今ここにいる、今泣いてるあなたは“立浪悠《たつなみゆう》”さんです」  今の自分を否定しないその名前に、”悠《ゆう》”は少しだけ救われた気がした。  しかし、そのやさしさに触れるたび、ユウは次第に自分は誰なのかを問い続けるようになる。  もし記憶が戻ったら、俺はまた“悠《はるか》”に戻るのか  そしたら“悠《ゆう》”は消えるのか  これは、互いのために変わろうとする二人のたった4ヶ月、あるいは一生分の物語。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2025/06/29
  • 現在の作品ここにいた証拠を残して