あらすじ
千年の都の誇りを胸に、
言葉の力で世界を動かした女性(ひと)がいた――。
明治二十六年(1893年)、アメリカ合衆国シカゴ。白亜の摩天楼が未来を語り、世界中の富と技術が競い合う万国博覧会の喧騒のなか、ひときわ静謐な輝きを放つ日本の宝がありました。宇治の平等院鳳凰堂を再現した「鳳凰殿」。それは、西洋列強に追いつき追い越せと邁進する明治日本が、初めて世界に対し、自らの文化の深奥を問いかけた大胆な試みでした。
この壮大なプロジェクトの最前線に、一人の日本人女性がいました。 彼女の名は、桐島文子(リザ)。京都に生まれ、アメリカで育った帰国子女。流暢な英語と鋭敏な国際感覚、そしてジャーナリストとしての燃えるような使命感を胸に、彼女は「言葉の架け橋」となるべくシカゴの地に立ちます。京都実業協会の代表として、また一人の表現者として、彼女が背負ったのは、単なる通訳や広報という役割を超え、日本の美意識、京都の魂を、偏見や無理解の壁を越えて世界の人々の心に届けるという重責でした。