あらすじ
夏に焦がれて焼かれて溶けた。交わしたキスに恋という名の名前をください……。
七月初旬という中途半端な時期に菰野岩(こものいわ)高校へ転校することになった二年生の麻生和樹(あそうかずき)は、転入前日にプールで「茜(あかね)」と名乗る精悍で体格のいい青年と知り合う。
二年B組に配属された和樹は伊藤柊太(いとうしゅうた)と知り合い、彼が憧れの先輩、鍵丸椎菜(かぎまるしいな)とお近付きになるために、共に椎菜が所属している同好会、菰野岩高校の謎調査同好会、通称『調査部』に入会しようともちかけられる。折しも夏休み目前で、引っ越してきたばかりの和樹に予定はない。軽い気持ちでつきあった和樹を出迎えたのは、鍵丸椎菜と、彼女の従兄弟である鍵丸茜だった。
夏休みに入り『調査部』に加入した和樹と柊太は、活動の柱である菰野岩高校の謎の調査――すなわち、十年前におきた未解決事件である、『菰野岩高校三人失踪事件』の真相について調べを進めてゆく。
第一の失踪者は当時二年生の女子生徒で、七月の中旬、夏休みを目前としたある日に姿を消した。
第二の失踪者は一年の男子生徒。
第三の失踪者は、当時教育実習生として菰野岩に訪れていた男子大学生だった。
椎菜曰く、菰野岩の中には、最初に失踪した女子生徒が各所に隠した手紙が隠されているのだという。椎菜と茜はこの手紙を集め続けており、今はその大半を見つけてあるのだが、その中にはある人物に対する恐怖感が綴られていて……。
夏休み、生徒の少ない学校の中、茜と共に手紙をさがす和樹。日も暮れだしたころ、うっかりパソコンルームで寝入ってしまった和樹は、緊迫した様子の茜に揺り起こされる。そして促されて気付いた。自分達に、正体不明の何者かが近付いてきていることを……。
十年前の事件と、茜達の関りとは何なのか。
十四通の手紙に隠された意図とはなんなのか。
不審者から逃げる和樹と茜。裏山の用具入れの中に隠れた二人が窓から目撃したのは……。
「どうして……」
「どうしてだろうな」
触れた茜の唇の感触が、そこに残っている。
茜はわずかに俯くと、あの鋭い三白眼に、冷たい炎を宿らせた。
「理由があって、言葉で全部説明すれば、何もかもが許されるっていうんだったら、俺は二度と神を信じない」