あらすじ
「リリアーナ・エルヴェール。貴様との婚約は、ここに破棄する!」
王太子であるユリウス殿下の声が、舞踏会の広間に響き渡る。
私は静かにドレスの裾を整え、彼を見上げた。
「……そう。では、正式な書類は明日までに提出してね。手間をかけさせないでちょうだい」
怒りに震える王太子を他所に、私はくるりと踵を返して去った。広間がざわめく。悪役令嬢が処刑されなかったことに、驚いているのだろう。
——まあ、当然よね。私は確かに“悪役令嬢”だったけれど、それは彼女を守るための演技だったんだから。
彼女。王子が今まさに腕を取っている女、ミリア・セレスティア。平民から成り上がった、自称『前世の記憶がある』少女。
つまり——
(私は乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。そして今、物語の断罪イベントが発生したわけ)
ただ一つ違うのは、このルート、本来なら私が国外追放されて終わり……じゃなかったこと。
だってこの国の未来、私がいなくなったら詰むわよ?
ふふ、どうするのかしら。見物ね。