あらすじ
冴えない男子校に通う俺、影山蓮。
目標もなく、退屈な毎日をやり過ごすだけの、灰色の世界。クラスの中心で太陽のように笑う美少女、高槻陽菜は、まるで別次元の生き物で、永遠に交わることのない、遠い世界の住人だと思っていた。
そう、あの日までは。
ある朝、俺の世界は、唐突にバグった。
自室の天井に、白い着物の女の霊がぶら下がり、街を歩けば、電柱の陰や路地裏に、名状しがたい異形が蠢いている。昨日までと何も変わらないはずの風景が、突如として牙をむく。狂っていく精神を抱えて登校した俺が、教室で見たのは、妖怪たちで溢れかえる地獄絵図だった。
――この世界は、もう終わりだ。
全てを諦めかけたその時、俺は見てしまった。
屋上で、楽しそうに、からかさおばけや、ろくろ首と談笑する、高槻陽菜の姿を。
思わず漏れた「視えてるのか…?」という呟き。それに振り返った彼女は、今までに見たどんな顔よりも嬉しそうに、太陽のように笑って、こう言ったのだ。
「君も〝視える〟のね!」
それは、孤独な世界で生きてきた少年と、誰にも言えない秘密を抱えてきた少女が出会った、奇跡の瞬間。陽菜に導かれ、俺は、この世界の本当の姿――怖くて、不思議で、でも、どこか温かい、妖怪たちとの付き合い方を知っていく。提灯お化けが照らす夜道を歩き、河童たちと馬鹿話をする。二人だけの秘密の時間は、俺の灰色の世界を、鮮やかに彩っていった。
だが、光が強くなれば、影もまた、濃くなる。
俺たち二人の急接近を、陽菜に想いを寄せる、プライドの高いエリート生徒・西園寺が、憎悪の目で見つめていた。その底なしの嫉妬心は、やがて、この世で最も厄介な存在――妖怪の総大将「ぬらりひょん」を呼び覚ましてしまう。
「お前に、力をくれてやろう」
邪神に心を喰われた西園寺は、凶悪な妖怪を操り、街に、そして俺たちに、牙をむく。
これは、単なる青春物語じゃない。
地味な男子校生と、太陽のような少女。そして、豆腐をくれる豆腐小僧や、消しゴムを隠す座敷童子といった、ちょっぴりおかしな仲間たちが、街の存亡と、大切な日常を守るため、日本の妖怪たちを巻き込んだ壮大な戦いに身を投じていく、現代の「妖怪大戦争」。
怖くて、おかしくて、そして、胸が熱くなる。
灰色の世界に生きていた少年が、本当の色を知る物語が、今、始まる。