あらすじ
「遺品」に触れると、持ち主の最も幸せだった記憶が視える。
そんな不思議な力を持つ青年、静島 廻(しずしま めぐる)。
彼の仕事は、故人が遺した部屋を片付ける「遺品整理士」。
だが、彼が整理するのはモノだけではない。
遺品に残された、誰にも言えなかった「ありがとう」や、伝えきれなかった「ごめんね」。そんな声なき声を拾い上げ、遺された者たちへとそっと手渡すのが、彼の本当の役目だった。
厳格な父が息子に隠していた不器用な愛情。
派手な彼女が恋人に遺した本当の夢。
質素な祖母が家族に遺した、からっぽの宝石箱に込められた秘密――。
廻は、モノに残された温かい記憶を通じて、すれ違ってしまった人々の心を繋いでいく。
しかし、廻自身もまた、整理できない過去を抱えていた。
同じ力を持っていた祖父の死、そして、どうしても触れることができない、家族の遺品。
人の記憶ばかりを巡る彼が、自身の時を動かすことはできるのか。
これは、モノと記憶を整理して、遺された人々の心をそっと解きほぐす物語。