あらすじ
「エリシア・リンドグレン、お前との婚約は破棄する!」
玉座の間に響き渡る婚約破棄の宣言。それはあまりに唐突で、あまりに演出過剰だった。王都の貴族たちが見守る中、王太子アルバートは得意げに宣言し、その隣には柔らかく微笑む金髪の少女が立っていた。
「これよりは、聖女ミレーヌを正式に王太子妃と迎える。貴族としての矜持を欠いた君には、相応の罰が必要だろう」
冤罪だった。エリシアは何一つ罪を犯していない。ただ、王太子が“聖女”と呼ばれる異世界転生者に夢中になったがために、貴族社会から追放されただけだった。
「わかりました。私は辺境の地で静かに暮らさせていただきます」
口元にうっすらと笑みを浮かべてそう答えたとき、王太子の眉がピクリと動いた。反論しないことが、彼にとっては一番つまらなかったのだろう。けれど、エリシアにとっては好都合だった。
——すべてを捨てて、やっと自由になれたのだから。