あらすじ
妖の声なんて、誰にでも聞こえるものじゃないの。
宮殿を逃げ出した元王女・蘅音(こういん)は、妖の願いを“香り”に酌む、不思議な力を持っていた。
恨み、約束、祈り、さみしさ——百の妖に、百の味がある。
酒は飲めない。けれど、酒を造ることが、彼女にとっての「祈り」だった。
目指すは、百妖百酒の帳をたずさえ、旅の果てに開く「願いの酒館」。
だがある日、彼女の前に一人の青年が現れる。
剣を振るう男。妖を討つ者。本来なら相容れないふたり。
それでも、彼は言う。
「お前の酒には、まだ知らない味がある気がしてな。」
妖を討つために育てられた青年と、妖の願いを聴く少女。
ふたりの旅路が交わるとき、世界は静かに、その裏側をほどき始める——
百の声を、香りに変えて。世界の片隅に灯る祈りをたどる、百妖百酒の幻想譚。
※登場する妖たちはすべて、『山海経』など古典に記された「伝説の妖」をもとに描かれています。