あらすじ
――証拠なき告白は、果たして真実か。
それとも、国を試す“罠”か。
東京・赤坂で、次期総理候補と目されていた政治家・藤堂雅晴が銃殺された。
混乱のなか、ひとりの男が警察に出頭し、静かにこう告げる。
「殺したのは、俺です」
名を葛西慶太(32)。職業不明、戸籍も曖昧、前歴なし。
供述は明快、動機は「正義」――だが、物的証拠は一切出てこなかった。
監視カメラは事件時に“偶然”故障。
指紋、目撃者、銃の行方、すべてが不明。
“自白”以外に、彼を縛るものはなかった。
「このままでは無罪になる」
焦る検察、騒ぐ世論、扇動するメディア。
沈黙する被告の存在は、やがて“国家そのものの信頼”をも揺さぶっていく。
さらに浮上するのは、被害者である政治家の“裏の顔”。
その息子である少年宗司の証言が、法廷の空気を一変させる――
「父は、正義の人なんかじゃなかった」
「葛西さんは、それを知っていた」
裁くべきは、被告か、それともこの国の正義か。
“語られすぎた真実”と、“語られなさすぎる沈黙”の狭間で、
国家は判決という名の答えを求められる。
だが、裁判の最終日。
葛西が初めて語った言葉は、すべての意味を裏返す一言だった――
「僕は……裁かれたいわけじゃなかった」
──静かな一言が、国家全体を沈黙させる。
これは、“正義”と“沈黙”がせめぎ合う、
誰もが裁かれる物語。