あらすじ
ブラック企業で心をすり減らし、過労死した平凡なサラリーマン。
彼が次に目覚めたのは、剣と魔法が支配する異世界だった。転生時のシステムエラーか、あるいは神の気まぐれか、彼の手には、世界の理(ことわり)すら書き換えるほどの、あまりにも「規格外」な力が宿っていた。
だが、彼が望んだのは、英雄になることでも、世界を支配することでもない。
「もう、誰にも、何にも縛られず、ただ、静かに、平穏に暮らしたい」
前世で失った穏やかな日常を取り戻すため、彼はその規格外な力をひた隠し、名もなき一人の青年「カイン」として、目立たず生きることを決意する。
――しかし、一人の少女との出会いが、彼の運命を、そして世界の運命をも、根底から覆してしまう。
太陽のような笑顔を持つ、心優しき少女「リリア」。
彼女の、ただひたむきで、清らかな心に、カインは一瞬で心を奪われた。
空っぽだった彼の世界に、初めて色がつき、意味が生まれた瞬間だった。
「この笑顔を、守りたい。この笑顔が、曇るくらいなら、世界なんて、どうなってもいい」
その日から、彼の生きる目的は、たった一つになった。
だが、二人のささやかな平穏を、この世界は許さない。
貴族の腐敗、帝国の侵攻、そして、人類の神話ですら玩具にする、魔王軍四天王という「絶望」。次々と現れる脅威が、リリアの笑顔を奪おうとする。
人類最強の英雄たちが膝をつき、世界が絶望に染まるその時、ついに青年は、その隠し続けてきた力の、一端を解放する。
世界のためじゃない。神のためでもない。
ただ、愛する少女の涙を、もう見たくないから――。
これは、詠唱破棄とか、レベルカンストとか、そんな生易しいチートじゃない。
彼がひとたび本気になれば、神話は過去となり、世界の法則は書き換えられ、絶対的な絶望ですら、無に還る。
力を隠したい最強の青年が、一人の少女の笑顔のためだけに、うっかり世界を救ってしまう、愛と規格外の無双譚。