あらすじ

※本作は第33回電撃小説大賞(メディアワークス文庫部門)応募作品です。 毎年のように川が氾濫し、小舟が流される町。 人々は舟を買い替え、三階建ての家でなるべく高い場所に暮らし、生活をつないでいた。そんな水上の町で暮らす少女・ユナは、幼い頃の洪水で双子の妹・リイナを失った――はずだった。 だがその記憶は、不自然なまでに曖昧だった。悲しいはずの喪失を、どこか他人事のように感じる自分。まるで何か大切な鍵が、心から抜き取られているかのように。 そんなある夜、ユナは夢の中で舟に乗り、不思議な光に導かれて、「天の書架(あまのしょか)」と呼ばれる天空の図書館へと辿り着く。そこは、世界のすべての記憶――人の心や魂、時さえも保存されるアカシックレコードの図書館だった。 その場所で彼女は、自分が“ある記憶”に自ら鍵をかけ、忘れようとしていたことを知る。 そして判明する――妹・リイナは死んでなどいなかった。 洪水の夜、リイナは隣国の都市で保護され、記憶を失ったまま“亡き王女の身代わり”として王と妃に迎えられていた。 瓜二つの顔。喪った悲しみに耐えかねた王族が、そのまま“娘として”育ててしまったのだ。 一方、王女として生きる李衣奈もまた、なぜ自分が“ここにいるのか”を知らずにいた。 姉妹の記憶は、互いの心の奥で静かに眠ったまま時を越え、やがてふたたび邂逅の予感を呼び覚ましていく。 優奈は、天の書架に記された“洪水を止めるための設計図”を頼りに、町の未来を変えようと決意する。 それは大人でも為しえなかった挑戦。けれど失った過去と、姉との約束、そして町の未来を取り戻すため――少女は進む。 ――なぜ人は忘れるのか。 ――なぜ記憶は香りのように漂い、消えていくのか。 これは、記憶を辿る旅。 双子の絆と再会、そして川の運命を変える物語。 水と記憶、失われた時間と天に記された叡智が織りなす、静かで壮大な現代ファンタジー。

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カクヨム
カクヨム2025/06/12
  • 現在の作品天の書架と記憶の舟