あらすじ
……右眼の奥に、鈍く熱を持ったような違和感が広がっていた。
「視界が……ぶれる……?」
気づけば、光が滲み、焦点が合わなくなっていた。感知能力が過剰に働きすぎて、通常の視覚と干渉しているらしい。
(長時間の使用はリスクがある……!)
慌てて魔力の流れを切り、“魔眼”の展開を解除する。
「……っはぁ、はぁ……なるほどな……」
右眼に浮かんでいた紋様が、ゆっくりと消えていく。視界も徐々に安定し、ようやく深呼吸できた。
(便利すぎる力には、当然のように“負荷”がある……)
使いこなすには、訓練が必要だ。それも、日常に支障が出ないレベルまで。
「ふぅ……次は、“ストックの魔眼”か」
ただ、“何をストックできるのか”が問題だ。
(感知の魔眼をストックしたときのことを思い出せ……)
あれは、意識を失った直後、自然に吸収されていた。つまり、条件は明確じゃないが、「魔眼の状態を維持できなくなったとき」にストックされる可能性がある。
(なら、ストック眼に“蓄える”ってのは、無意識に行うものか……)
あるいは、少女が言っていた「キーワード」によって切り替えることができるのかもしれない。
「よし、試してみるか……」
再び魔力を集中し、今度は“左眼”に意識を向ける。
「開眼」
すると——
パキィィン!
頭の奥で、ガラスがひび割れるような音が響く。
——同時に、視界の上に二つの選択肢が浮かび上がる。
《魔眼選択メニュー》
ストックの魔眼
感知の魔眼(保存中)
交換する魔眼を選んでください。
「……メニュー形式かよ。便利すぎるだろ」
思わず笑みがこぼれた。どうやら、“開眼”によって魔眼の切り替えが可能になるらしい。しかも、魔眼ごとの“保存”と“展開”ができる。
「ってことは……ストック数、増やせるってことか?」
少女の声が脳内でクスッと笑った。
「そういうこと。あなたが覚醒させた“ストックの魔眼”は、かつてのご主人様ですら成し得なかった“複眼保存”の進化形態。使い方次第で、魔眼使いとしての格がまるで変わるよ」
「格が……か」
視界の奥で、ゆらりと光る“感知の魔眼”のアイコン。それを選択すれば、再び視界に“命の光”が戻ってくるのだろう。
(俺は……これから何を、どれだけ“視る”のだろうか)
今はまだ、序章に過ぎない。
——“魔眼”という力の、真の可能性は。
そして、それに見合うだけの“代償”が、待ち構えていることも。
それでも、少年は歩き出す。
夢を叶えるために。
“探索者”として、己の眼で、世界を暴くために——。