あらすじ

ーーー中学二年の「僕」は、いまだにあの記憶に囚われている。 それは、職場体験という名の平穏な日常に、ひっそりと埋まっていた落とし穴だった。 冷蔵倉庫での作業中、ただトイレに行っただけ――本当に、それだけのはずだった。 だが、無機質な廊下に立ち尽くした僕は、自分がどこに帰ればいいのか分からなくなっていた。 無数の扉。曖昧な識別番号。思い出せない。 焦りと恐怖、誰にも見つけてもらえないという予感。 そして何より、叱られるのが怖かった。怒られるのが嫌だった。 ただそれだけの幼さが、僕の判断を奪っていった。 辺りを見回し、ありもしない手がかりを求めてさまよう廊下の先。 かすかに開いた扉に、僕は藁にもすがる思いで駆け寄った。 そこに本当に先生やクラスメイトがいるのか、確かめもしないまま。 理性も、希望も、置き去りにして。 その日から、「僕」の人生は唐突に終わりを迎えた。 ーーーこれは、かつて「少年」だった者の、諦めの物語である。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2025/06/01
  • 現在の作品FIS - 遺伝性低体温恒常性症候群 -