あらすじ
小説『防波堤』によせて
皆様、初めまして。作者の志乃原七海です。
この度、新作『防波堤』を皆様にお届けできることを、心から嬉しく思います。
この物語は、ある一つの「事実」によって、穏やかだったはずの家族の日常が静かに侵食されていく様を描いた、心理ドラマです。
主人公の沙希(さき)は、ごく普通の家庭で、愛情深い両親と、太陽のように明るい妹・結菜(ゆいな)と共に育ちました。彼女の世界は、家族という名の頑丈な『防波堤』に守られた、安全で穏やかな港でした。
しかし、ある出来事をきっかけに、沙希はその防波堤に隠された、一つの亀裂に気づいてしまいます。
なぜ、両親の愛情はあからさまに妹にばかり注がれるのか?
なぜ、自分との間には、いつも見えない壁があるように感じるのか?
長年抱いてきた小さな違和感は、やがて拭い去ることのできない「疑惑」へと変わり、彼女を真実の探求へと駆り立てます。
ですが、この物語は単純な謎解きや、誰かを断罪する物語ではありません。
私がこの『防波堤』という物語を通して皆様に問いたかったのは、**「家族を、家族たらしめているものは何か」**ということです。
それは、血の繋がりでしょうか。共に過ごした時間でしょうか。
あるいは、責任や、罪悪感、誰にも言えない秘密なのでしょうか。
悪意のない、ごく普通の人間が抱く「恐怖」や「弱さ」が、時に刃となって最も愛する人を傷つけてしまう。そんな皮肉な悲劇が、私たちの日常のすぐ隣には存在します。
安全なはずの港が、いつしか自分だけを孤立させる冷たい壁になる。その息苦しさと孤独を、この物語から感じていただけたなら幸いです。
登場人物たちの心の揺れ動きに寄り添いながら、あなたにとっての「家族」とは何か、「愛」とは何かを、そっと見つめ直すきっかけになればと願っています。
防波堤が崩れた時、その向こうに見えるのは絶望か、それとも新たな希望の光か。
沙希と共に、その景色を見届けてください。