あらすじ
追いつきたいんじゃない。並んで、笑っていたいだけだった。
名門・青嶺学園自転車部に入部した馳 悠斗は、
周囲のテンポに馴染めず、距離を測りながら過ごしていた。
そんなとき、部室の片隅で耳に入ってきた少女の声。
「物体Bが気まずそうで──」
意味不明。けれど、不思議と耳が覚えていた。
名前は、布施利他。
笑いのセンスも、勘も、言葉の選び方も、全部ずれてる。
でも、それがいい。
気づけば、目で追っていた。
追いかけるでもなく、巻き込まれるでもなく──
ただ、隣にいたいと思っていた。
『白鯨と翼』で描かれた風のような彼女の“別の物語”。
これは、その隣に立とうとした少年の、静かでまっすぐな追走の記録。
焦がれるより、笑っていたい。
選ばれるより、並びたい。
そんな恋と青春の話。
▼物語の歩みについて
恋が動き出すのは中盤以降。
それまでは、登場人物たちの“ふだんの温度”や“言葉の選び方”を通して、ゆっくりと関係性が築かれていきます。
すぐに恋が始まるわけではないぶん、気づかぬまま進む感情の深まりを味わってもらえたら嬉しいです。