あらすじ

絶対潰れないはずの特養が倒産

灯りはいつも
夕食前に
そっとともされていた

この場所は
「終の住処」と呼ばれていた
風の強い日も
家族が来なくても
せめてここでは
守られると信じていた

絶対潰れない
——はずだった

なのに
ひとつずつ
静かに失われていった

暖かいごはんの湯気
柔らかなシーツの感触
馴染んだ声のナースコール
名前を呼ぶ声のあたたかさ

最後に残った
「安心」という名の灯りだけが
ゆらゆらと
消えた

帳簿には残らない
涙も、人生も、祈りも
誰が測れるのだろう

「ここは私たちの家だったのよ」
老いた声が
空の廊下に残響する

それでも
誰かが
また
どこかで
灯りをともすだろうか

私たちは問いかける
何を守るために
この仕事をしてきたのか

廃墟の中に立ち尽くし
ふと、背を伸ばす
希望と呼ぶには
小さすぎるけれど
それでも
この胸の奥に
まだ、あたたかい何かが残っている

絶対潰れないものは
もう、ないかもしれない
それでも
絶対に消えない願いだけが
今日も
誰かの手の中で
静かに燃えている

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アルファポリス
アルファポリス2025/07/25
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