あらすじ

雨宿りの夜、私は少年と出会った。 彼は雨に濡れた子犬のように震えていて、どこか──過去の私に似ていた。 吸血鬼である私は、彼の血にほんの少しだけ触れた。 それだけで十分だったはずだった。 でも、あの味は私の中の何かを壊した。 そして彼は、私に笑って言った。 「僕の死だけは、僕のものになっていいよね?」 彼の血を吸うたび、私の中に彼が染みこんでいった。 彼の命は、彼のものではなく、誰かの代わりとしてしか扱われてこなかった。 そんな彼が“自分だけの死”を求め、私にそれを託してくる。 私は与えられた愛に溺れ、喰うはずだった“人間”に、喰べられていった。 幾夜を共にし、彼は大人になった。 そして誕生日の雨の夜、彼は言った。 「君に一番綺麗な僕を、食べてほしい」 私は永遠を持つ者として、彼の命を、彼の願いを、彼の愛を抱き締める。 そして、彼は最後に私の首に噛みついた。 その痛みが、なによりも嬉しかった。 ──あの日以来、私に朝は来ない。 私は今も彼に問うている。 「ねぇ、私はまだ、美しい?」 喰べて、愛して、喰べられて。 愛の終着点を描く、吸血鬼と人間の“雨宿り”。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
エブリスタ
エブリスタ2025/06/27
  • 現在の作品雨宿りで、吸血鬼は、最後の人に喰べられた。