あらすじ
なろうとカクヨムにも掲載中
世界がまだ「理」という名の枷に囚われていた頃。深淵より這い出でし存在《ヴァル=ザイン=ノワリア=レーヴァギア》は、己の玉座――すなわち“ダンジョン”を築く地を選ばんとしていた。
薄紫の霧が漂う無の空間。その中心に静かに浮かぶのは、漆黒と白銀の螺旋装甲に覆われた球状の存在――ダンジョンコア《ラムドゥ=ネイル・オルトラージュ》。その外殻には千の文字列が走り、常に書き換えられては消え、また浮かび上がる。中心の赤い輝点は意思を持つ瞳のように瞬き、観測不可能な記憶の海を思わせる光を湛えていた。
「――候補地点は六。いずれも、狂気と覇道を編むに相応しき地」
《レーヴァギア》は沈黙のまま、その声を待った。彼の姿は、人ならぬ威容にして、人の形を模す“災厄の偶像”そのもの。漆黒の外套は常に逆巻く風のように揺れ、肉体は有機金属と魔性の血肉によって構成されている。六枚の破損した翼が背より伸び、その羽根は虚空へと絶えず消失と生成を繰り返す。仮面のように白く光る顔には口がなく、感情を映さぬ双眸だけが、藍の焔を湛えて燃えていた。
禍々しき気配は外に漏れることなく、ただ静かに、その存在が“在る”ことだけで、空間そのものが軋んでいた。
*
一つ目。《リズヴェルト断層地帯》――次元の歪みによって常に空間が再編成される、破滅の地。 かつて七柱神の一柱が堕ち、その神骸を取り囲むように無数の異界門が現れた。
「侵略者にとっては出入りがしやすく、同時に防衛も難しい。だが、貴殿の“在るだけで崩壊を起こす”性質を持ってすれば、この地は真なる“絶対封域”と化すだろう」
二つ目。《神喰らいの深淵》――神々の遺体が堆積した死の海。
「神性を食らう現象が自然発生するこの地では、いかなる神も抗えぬ。 しかし貴殿は“神ではなく理災”。喰らわれることはない。逆に、この地の“神骸”どもを貴殿の眷属として蘇らせることすら可能だろう」
三つ目。《燐界トゥア=ラズハ》――終焉の空が支配する、幻想と現実の狭間。
「この地の住人は既に狂気の中にある。貴殿が現れれば、その狂気すら秩序へと転じる。霊的存在を軸とした支配構造を築くには、申し分ない」
そして四つ目。
《月渇砂漠《ラハ=セクノール》》――月が血を滴らせる、永夜の吸血砂漠。