あらすじ

人里離れた山峡の町で、ある日、世界の法則が一つ消失した。三日月が天頂に達した夜明け、町の人々から「影」という概念そのものが蒸発していたのだ。最初は奇妙な軽やかさを感じた人々だが、やがて異変は感情にも及び、笑いや涙、怒り、喜びといったあらゆる色彩が、彼らの心から失われていく。人々の顔は無表情な蝋人形と化し、言葉は機械的な響きを帯び始めた。 そんな中、ただ一人、少年リクの足元にだけは、異常なほど濃密な漆黒の影が寄り添っていた。その異質さに、感情を失いつつある町の人々でさえ本能的な不安を抱き、「あの子が何かを盗んだのではないか」と囁くようになる。孤立したリクは、町の古い図書館で埃にまみれた古書を紐解き、驚くべき真実に辿り着く。 影とは、人間の記憶、感情、魂の輪郭そのものであり、町の地下深くにある「魂の井戸」が涸れたことで、影が失われたのだと古書は語っていた。そして、リク自身が、太古から続く町の「影の守護者」――人々の魂を一時的に預かり、危機の際に還す宿命を負った存在であることを知る。 新月の闇が町を包む深夜、リクは中央広場の石碑の前に立つ。星々が見守る中、彼は魂の響きを持つ呪文を唱えた。「我が影よ、散りて皆の光となれ」。その瞬間、リクの漆黒の影は、あらゆる色を内包した虹色の光となって溢れ出し、町の隅々まで浸透していく。

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エブリスタ
エブリスタ2025/06/12
  • 現在の作品伝説の影守(かげもり)