あらすじ
レンタル彼女の予約を入れてきたのは、忘れられない初恋の人だった――。
宮内日葵は、OLをしながら空いた時間でレンタル彼女のキャスト“葵”として働く25歳。
シングルマザーとして自分を育ててくれた母親との生活を守るための二足の草鞋、というのもある。
けれど、両親の離婚や借金など不遇な家庭環境のもとに育ってきた日葵にとって、キャストの仕事は“憧れの女の子”になりきれる救いの場でもあった。
ある日、予約の入った新規の客の名前に目が留まる。
見覚えのある三文字。まさか――。
待ち合わせ場所に来た彼は、高校生のとき日葵が初めて恋をした相手、井上淳だった。
これまでの境遇から自分に自信を持てなかった日葵にとって、淳ははじめて心を許せたかけがえのない存在。その恋が実ることはなかったけれど――。
私だって気づかれてる?
気が気じゃない日葵だが、当の本人はそんな素振りもなくスマートにエスコートしてくれる。
何気ない会話の中で高校時代の二人がありありとよみがえり、次第に心が揺れはじめる日葵。
会えば会うほど「自分だと気づいてほしい」という気持ちが強まり、それは駄目だと言い聞かせる日々で、不穏な音が響き始める。
これまでほとんどなかった“葵”へのアンチコメントが目につくようになったり、誰かに後をつけられているような気配がしたり……。
気づかないふりをしていたけれど、これらは淳と会うようになってから起こりはじめたことだった。
そして、あるとき、高校時代の日葵の情報がネットに晒される事件が。このことを知っているのは、限られた人物しかいない。
日葵はついに、一つの真実に向き合おうと意を決する。
何が正解かもわからない生きづらい世の中で、それでも信じたい、愛したいと思うものに全身全霊で向き合ってゆく。
そんな女性たちの強い姿を描いたオムニバスストーリー。