あらすじ
高校三年の梅雨入りの日、航太はバス停で転校生の明日美と出会う。彼女は「時間の密度」を測る自作の機械を持ち、父親が時間の分岐や密度について研究していたこと、事故で失踪したことを語る。明日美は父が最後に調査していた場所がこの学校であり、時間の密度が異常に高い場所を探しているのだという。
航太と明日美は学校内を調査し、購買部裏の倉庫付近で時間の密度が急上昇する現象を体験。雨の中、二人は時空の境界を越え、微妙に異なる過去の学校に迷い込む。意識を集中させることで元の世界に戻るが、明日美は父も同じ現象に巻き込まれたと確信する。
調査を続けるうち、倉庫裏で昭和時代のラブレターと古い桜の写真を発見。強い想いが時間の密度を歪めるという父の理論を裏付ける証拠だった。再び時間の層が重なる現象を利用し、航太と明日美は過去の桜の木の下で、父や過去の人物たちと一瞬だけ邂逅する。父は別の時間軸で研究を続けていることが分かり、明日美は安堵と寂しさの入り混じった思いを抱く。
航太は「寂しいのは愛している証拠」と明日美を支え、二人は互いの気持ちを確かめ合う。以後も父の無事を確認しつつ、特別な場所での時間を大切に過ごすようになる。やがて大学生となった二人は母校を再訪し、雨の中でかつての思い出と父の存在を心に感じながら、変わらぬ絆を確かめ合う。