あらすじ
「父さんと俺…
……本当に血が繋がっていないの?」
高校の卒業式を終え
大学受験の合否も出た、春休みのある日。
俺は父さんから告げられた言葉を直ぐには受け入れられず、もう一度そう尋ねた。
父さんは大きな目を俺から逸らさずに
「そうだよ」と静かに言った。
父さんが言うには、
父さんが母さんと出会った時───
既に母さんの腹の中には俺がいたらしい。
父さんはそんな母さんを好きになり
望んで結婚したのだそうだ。
そんなのまるで…
カッコウの托卵じゃないか…
そう動揺しながら
俺はあることを思い出す。
あの夏の日に俺が見てしまったもの。
あれは夢じゃなかったのかもしれない。
まだ10歳だった…昼寝をしてしまった俺の前で
あの人は母さんにキスをした。
「忘れた日はなかったよ」
この上なく愛おしそうに、寂しそうにそう告げて。