あらすじ

和子は、70才を過ぎたころから認知症を発症した夫、文一郎のいる老人施設の窓際に座っている。 窓の外には、桜の木の下で遊ぶ子供が可愛い。 そんな夫に、和子は話しかけるように独り言をつぶやく。 和子には、ある疑惑があった。 夫が、40才ごろ、和子に内緒で女の人と浮気してたのではないかと言う疑惑だ。 でも、その当時は、それを確かめる勇気はなかった。 今はもう、いくら聞いても答えらえない状態なのだ。 それどころか、和子の顔も名前も、忘れている時間の方が長い。 ふと、和子は考える。 この人の頭の中には、あたしの記憶がない。 ということは、この人にとっては、あたしという人間は、存在しないのとイコールだと。 それも、夫が、和子の事を忘れた瞬間から、和子が存在しないのとイコールになったのではなく、 忘れた瞬間から、その過去の45年の結婚生活と、45年の和子が、存在しないものとなったと同じなのだ。 それに気が付いた時に、今までのあたしは何だったんだろうと思う。 そして、自宅へ帰る途中、これからの人生を楽しむことを考える。 でも、和子の中には、まだ、文一郎が存在していたのである。

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エブリスタ2021/04/13
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