あらすじ
十五歳の川村拓海は、ある夏の朝から背中を通じて誰かの感情が流れ込む不思議な体質に気づく。初めは戸惑いつつも、その感情には喜びや悲しみ、恋心など様々な色があり、毎日変わるのだった。そんな中、市立図書館で「背中の記憶」という本を見つけ、自分の感情も誰かに送られていることを知る。
やがて拓海は学校の後輩である椎名るなと出会い、互いに感情を送り合う相手だったことが判明する。二人は図書館などで会い、お互いの複雑な思いを共有しながら親しくなっていく。しかし、感情が混ざり合うことで自分が自分でなくなる感覚に襲われ、るなは苦悩の末に拓海から離れる決断をする。
八年の歳月が過ぎたある日、偶然の再会を果たした拓海とるなは、かつてのように感情が伝わることを感じるが、今度は互いの心がしっかりと独立しており、混じり合うことはなかった。成長と自立を経て、ふたりはそれぞれの感情を尊重し合いながら再び惹かれていく。
その後、恋人となった二人は結婚し、背中で繋がり続けながらも、言葉での会話を大切にする。感情が共有されても個々の心は独立しているからこそ、真の愛として成立することを実感するのだった。あの夏から続く不思議な絆は、彼らの成長と自立を経て成熟した関係へと変わり、互いに支え合う日々を生きていく。