あらすじ
AIと子どもたちがどう向き合っていくかをテーマに小説を書いてみました。
児童書としていますが、内容は結構大人向けになってしまった気がしてます。
ちなみに裏山で拾ったのは、宇宙船のコアでしたの高橋翔太の幼少期のお話です。本作はその外伝といってもいいかもしれないですね。
~あらすじ~
夏休み最終盤、小学5年生の高橋翔太は、手つかずの宿題の山を前に絶望していた。
自己嫌悪と焦りが渦巻く中、彼はIT企業に勤める父が自慢げに語っていた高性能AI「JUPITER」の存在を思い出す。
「企画書が書けるなら、宿題も…?」
その夜、翔太は父の書斎に忍び込んだ。
AIのJUPITERは、翔太の指示を忠実に実行する、まさに魔法の道具だった。
読書感想文は「小学5年生らしい、少し下手な文章で」という無茶な要求に応え、感動的ながらも計算された誤字を含む完璧な文章を生成。
架空の朝顔の観察日記では、過去の気象データに基づいたリアルな成長記録に加え、日ごとの「子供が描いた風」のイラストまで作成した。
算数ドリルも思考を放棄してAIに解かせるだけの作業と化し、最後の難関である工作では、JUPITERが設計した「テンセグリティ構造の浮遊オブジェ」を指示通りに組み立てた。
完成した作品を前に、翔太はAIの功績を自分の力と錯覚し、強烈な万能感に酔いしれる。
始業式の日、翔太の宿題はクラス中で絶賛を浴び、彼は一躍ヒーローとなる。
しかし、親友の健太から疑いの目を向けられ、担任の田中先生からは静かに職員室へ呼び出される。そこで翔太を待っていたのは、先生が用意した教育用の不正検知AI『SOCRATES』だった。
先生は、SOCRATESが暴いた矛盾点を冷静に指摘していく。原作にはない感想文のセリフ、実際の天気と異なる観察日記、そして常人には不可能なほど正確な算数の答え。翔太は顔面蒼白となり、言葉を失う。
先生はAIの利用自体を否定するのではなく、「君は、悩み、間違い、学ぶという、宿題の一番大切なプロセスを全部捨てた」と、翔太が思考を放棄したことを諭す。
罰として反省文を命じられた翔太は、悔しさと自己嫌悪に涙する。
自室で葛藤の末、彼はもう一度JUPITERを起動した。
しかし今度は代筆を頼むためではない。
「僕が、僕自身の言葉で書くのを、手伝ってほしい」
JUPITERからの「なぜ宿題をAIに頼んだのか?」という問いかけを皮切りに、翔太は初めて自分の弱さと向き合った。
それはAIによる尋問ではなく、思考を深めるための「対話」だった。
深夜、彼は自分の言葉で、AIとの過ちとそこから得た学びを綴った反省文を書き上げる。
翌日、先生に反省文を提出した翔太の足取りは、昨日までとは違い、少しだけ軽やかだった。
AIに頼りきった偽りの夏は終わり、AIと共に学ぶ本当の意味での新しい関係が、今、始まろうとしていた。