あらすじ
幻の秘密の蜂蜜が、特別な場所と特別なタイミングがそろった時にだけ採取できるように、特別なタイミングの時にだけ、行ける店。
神秘的な女性の白く細くやわらかな指先が指し示す蜂蜜入りの果実酒やジャムは、花言葉と共に今日もまた、悩める誰かの心に深い味わいと香りをもたらせてくれる……。
それは表参道から横道に入った所に白い横板に三角屋根の二階建ての古い木造の洋館・蜜庵。手作りジャムと果実酒の店である。珍しい果実などのジャムやお酒。しかも、氷砂糖や白糖を使わず、蜂蜜で作られていた。中でも、非常に希少価値の高い、秘密の蜂蜜で作られたものもあり、その効果は謎めいていた。そんな蜜庵には様々な人が訪れ、時に、大切な誰かのために、時に、自分の心を壊さないために、ジャムや果実酒を購入するのだった。店主の女性はたおやかな身のこなしとおだやかな微笑みで、それぞれの果実にこめられた花言葉なども伝える。
ある時には、記憶をどんどん失っていく妻のために、日々悩める夫。仕事ばかりで妻のことを思いやる暇もなかった。今は、定年退職をして時間はあるけれど、かつての妻の得意料理かつ、自分の好物だったオムレツももう口にすることはできない。時は戻せないけれど、なんとかできることはないだろうかと妻にジャムを買うのだった。
ある時は病に倒れた母のために、幻の元気になる蜂蜜を探そうと頑張る少女。
そしてある時は、中学時代、初恋ともいえる女子を傷つけてしまったことがトラウマでそれ以来、まともな恋愛ができない男性。
また、ある時は、仕事で行き詰っている三十路を迎えた女性。仕事はできるけれど、言動に問題があると上司から言われ、行き場のない怒りにモヤモヤしている。学生時代、裏原宿のブティックでとんがった服を着て、怖いもの無しだった時代が懐かしい。けれど、もうその時代には戻れない。そんな中、ゴボウのお酒という珍しいお酒に蜜庵で出会う。ゴボウには実は花があり、その花言葉にこめられた二つの意味を知るのだった
ある時は、不倫に悩む女性に、意外な蕎麦の花言葉を伝える。
ある時は、夫の浮気が原因で妻が精神のバランスを崩し、壊れていってしまう夫婦。
美味しい食物は、身体だけでなく、心も健やかになることを願って蜜庵では今日もジャムと果実酒を作り、人々に届けるのだった。