あらすじ
1941年、クリスマス直前のマドリード。
矢嶋志貴は、上官の梶公使と共に、一人の青年と面会していた。母国の運命を、少しでも悲劇から遠ざけるために、彼の協力が必要だったのだ。
国を跨いだ諜報網を持つ、有能だが危険な男──テオバルド・アルヴァ・コルテス。しかし彼は、意外な人懐こさで志貴の心に入り込む。
「あんたにだけは、テオと呼ばれたい。……子供の頃の愛称だ、もう他に呼ぶ者もない」
陽気なラテンの色男の中に、時折垣間見える昏い情念と空虚な闇に強く惹かれる志貴と、付かず離れずの距離を保ちながらも愛を囁くテオバルド。
そして、幼馴染であり、年上の余裕と包容力で志貴を見守り甘やかす、駐在武官の衛藤一洋中佐。
「おいで志貴。──いつでもこうして、俺に甘えればいい」
2人から捧げられる強い情に戸惑いながらも、受け入れられずにいた志貴だったが、男たちの腕の中で、いつしか二人の想いに染められていく。
混迷を増す戦局の中、使命のために身動きが取れなくなっていく3人を、戦乱の大波が飲み込もうとしていた──。
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