あらすじ
景司は町の片隅でひっそりと「不用品回収業」を営んでいた。古びた軽トラックを走らせ、住宅地を巡る彼の仕事は、表向きは粗大ゴミや遺品の整理という善意の装いをまとっていたが、内実は使える品を抜き取り、密かに転売することで小銭を稼ぐ、ずる賢い商売だった。古い掛け軸、動く時計、骨董品、依頼主の無知と無関心を利用し、景司は着実に倉庫の奥を“宝の山”に変えていった。
ある日、景司は町外れの一軒家から遺品整理の依頼を受ける。亡き主人は元教師で、骨董を趣味にしていたという。景司の心は期待に高鳴り、作業の名のもとに品々を漁り、掛け軸や陶器などを巧みに抜き取る。しかしその中にあった帳簿が、後に景司の運命を大きく揺るがす。何気なく燃やしたその帳簿は、故人の資産と収集品の記録であり、やがて遺族の疑念を呼び、景司の元に探偵が現れる。
夜毎にうなされる悪夢、倉庫の隅に浮かぶ幻の帳簿、誰かに見られているという被害妄想。景司の心は次第に蝕まれ、頼みの骨董屋や質屋からも距離を置かれ、孤立と追放の道をたどる。僧侶に金を供養として納めようとするも拒まれ、景司はついに盗んだ金を土に埋めることで罪を封じようと試みる。しかし、それすらも救いにはならなかった。
逮捕され服役を終えた後、景司は再び町に戻るが、かつての仲間も住民も、彼に冷たい目を向けるだけだった。仕事もなく、日雇いで食いつなぐ日々の中で、彼はひとり、町の清掃活動に参加する。誰にも知られぬように黙々とゴミを拾うその姿には、過去のずるさや狡猾さは影を潜めていた。
景司はようやく、己の手で得たわずかな誇りと向き合いながら、静かに生きる術を見出していく。本作は、欲望に溺れ、罪を背負いながらも、再生を求めて歩み出す。