あらすじ
高校二年の春、転校生の「僕」は常に頭の中で謎の音が鳴っていることに悩んでいた。ある日、図書館で「音が見えるでしょう?」と声をかけてきた少女・芦原美夜子と出会う。彼女もまた、頭の中に美しい音を抱えて生きていた。二人は自分たちのような存在を「パラノーマル・シンセサイザー」と呼ぶ研究者がいることを知り、共に過ごすうちに、互いの音が共鳴し合い、和音となる不思議な現象を体験する。
やがて、同じクラスの久我山蒼と出会い、三人が揃った瞬間、三つの音が混ざり合い、現実をも変える「伝説の第三音」が生まれる。彼らの力は次第に強まり、時間の流れや物理現象をも自在に操れるようになるが、その代償として、三人は少しずつ自分たちの記憶を失っていく。音の力は過去の記憶を燃料にしており、力を使うほど自分が誰だったかも曖昧になっていくのだった。
やがて力は制御不能となり、町全体の現実が書き換えられていく。三人はこのままでは世界が壊れてしまうと気づき、力を封じる唯一の方法として、離れ離れになる決断をする。別れの日、三人は最後の和音を響かせ、それぞれの道を歩み出す。世界は元に戻り、彼らの頭の中には再び単調な音が残るが、以前ほど不快ではなかった。
十年後、約束の場所で再会した三人は、再び音を感じながらも、もはや現実を変えることなく音をコントロールできるようになっていた。かつての危うい一体感は失われたが、成熟した心で新たなつながりを確かめ合う。パラノーマル・シンセサイザーの音は、青春の証であり、時を超えて彼らを結ぶ永遠の調べとなったのだった。