あらすじ
十七歳の「僕」は、ある日突然、嗅覚だけが過去に飛ぶ奇妙な現象に悩まされる。石鹸やバニラエッセンスなどの匂いを嗅ぐと、意識だけが過去の特定の瞬間へとタイムリープし、その時の感覚や出来事を鮮明に体験できるのだ。同じ現象を持つ少女・椿と出会い、二人は「フラグメンター」と呼ばれる同じ能力を持つ十七歳たちが世界中に存在することを知る。だが現象は次第に制御不能となり、過去の記憶が改変され、現実世界も変わり始める。やがて、二人は自分たちが十七年前の「フレグランス・プロジェクト」という香料実験の影響で生まれた存在だと知る。実験の目的は、未来からの歴史改変を防ぐため、過去を修正できる能力者を作り出すことだった。しかし能力の暴走で現実が不安定になり、主人公は親友・美咲にまで自分の存在を忘れられてしまう。
手がかりを求めて、三人は主人公の祖母が隠した実験の核心装置を探し出す。祖母は装置を破壊すれば現実改変は止まるが、能力も失われると遺していた。三人は悩んだ末、装置を破壊せず、能力をコントロールするシステムを作ることを選ぶ。美咲は改変前の記憶を夢として保持する「記憶の錨」として、現実の安定に貢献する。こうして彼らは、普通の高校生でありながら「時間の守護者」として生きることを決意する。
匂いを通じて過去と現在、未来が繋がり、友情や愛、青春のきらめきもまた時を超えて残る。三人はそれぞれの役割を受け入れ、特別な力と普通の日常の両方を大切にしながら、新しい未来へと歩み出すのだった。