あらすじ
高校二年生の「僕」は、流星雨を見に出かけた夜、突然の雨に降られ、見知らぬ後輩の少女・ムーン(美月)と軒下で雨宿りをする。ムーンはこの雨を「軌道雨」と呼び、宇宙ステーションから降る特別な雨だと語る。彼女の導きで目を閉じると、「僕」は雨音の中に宇宙の軌道の音を聴き、目を開けると雨粒が星のように光っている不思議な光景を見る。それは心に空白を抱えた者だけが見える「愛の雨」だった。
ムーンもまた、幼い頃から軌道雨が見えていた。彼女は「軌道雨が見える人は、みんな何かを探している」と語り、二人はその特別な感覚を分かち合う。やがてムーンは「一緒に宇宙ステーションへ行こう」と誘い、二人は軌道雨に乗って空へ昇り、未来の自分たちと出会う。宇宙ステーションは、未来の自分たちが過去の自分たちを救うために「軌道雨」を作る場所だった。軌道雨は、愛の循環そのもの。愛があれば、誰でもこの雨を見ることができるという。
地上に戻った二人は、今度は自分たちが「軌道雨を見えない人」に愛を伝え、雨を見せてあげる役割を担うことになる。雨の日、傘を忘れて困っている人と雨宿りし、手を取り、心からその人を想うことで、相手にも軌道雨が見えるようになる。こうして仲間が増え、軌道雨の輪は広がっていく。
やがて「僕」とムーンは大人になり、結婚しても活動を続ける。雨の日には困っている人に声をかけ、軌道雨を見せ、愛を伝え続ける。軌道雨は、過去から未来へ、未来から過去へと流れる愛の象徴。二人はその循環の中で生き、幸せを感じている。空が泣くのは悲しみではなく、喜びと愛の涙。軌道雨は今日も、二人だけの軒下、そして多くの人の心に降り続けている。