あらすじ

自分の才能にかけ、作家を目指す26歳の冴島胡蝶。彼の処女作『不透明な巡礼』は、出版社が主催する黄昏ミステリー大賞で最終選考まで進んだ。その驚きと快感も冷めやらぬまま、冴島は第二作の執筆を開始する。しかし、まったく筆が進まない。 鬱屈した彼は思いつくままに神頸町という地方都市に旅行にでかける。人口6000人たらずの小さな町、冴島はそこで快活な若者、矢尾板麗央と出会う。矢尾板は胡蝶と同じく、東京から神頸町にやってきた同い年の青年だった。 一方、神頸町にある温泉宿、塩野家のひとり娘、駿河真琴は大学卒業後、実家に戻り、宿の離れで暮らしていた。大学時代、ロックバンドでギターを担当していた彼女は、プロの作曲家になることを目指し、ひとり曲作りに励む日々を送っていた。 出会ったその日、矢尾板と冴島は町にある居酒屋、「天童」へとでかけた。冴島はそこで可憐な駿河真琴と出会う。じつは塩野家で駿河を一瞥した冴島は既に彼女に心を奪われていた。作家志望の冴島と作曲家志望の駿河、ふたりはすぐに意気投合した。 不思議な吸引力によって惹かれあう冴島と駿河、ふたりの創作者はやがて激烈な恋に落ちる。ふたりは月夜の晩に塩野家の離れへと向かい、結ばれた。 神頸町の名家、宍倉家の当主、左近は突如、この町にやってきた矢尾板麗央が自分の落胤であることを知る。 そんな折、宍倉家のふたりが同時に殺害される事件が起こった。ひとりは左近の長男、傲岸不遜な宍倉霞、そしてもうひとりは左近の後妻である毒女の宍倉瑞穂だった。 ふたりが殺害された夜、町を徘徊する不気味な鬼面の男が目撃された。赤い鬼の面を被り、漆黒の着流しに身を包んだ謎の殺人者、鬼面は不審者として即座に警察にマークされた。 宍倉家の殺人、そして赤い面を被った殺人鬼の幻影は、昭和39年に神頸町で発生した殺人事件をすぐさま想起させた。犯人は、若い娘に狂った左近の父、宍倉忠正だった。忠正は赤い面を被り、黒い着流しを纏い、虹波集落を襲った。忠正は恋に落ちた若い娘、百瀬百合子の両親を惨殺し、隣家の澤田夫婦に大怪我を負わせた。 警察、そして市井の素人探偵、矢尾板麗央は宍倉家の暗部に着目し、犯人を探し求め、町を駆け巡る。昭和39年の事件と今回の二重殺人事件の関連は? 犯人が忠正のいで立ちを模倣した理由とは? そして鬼面の正体とは?

連載情報

ウェブ小説

配信言語
エブリスタ
エブリスタ2021/07/23
  • 現在の作品純白は漆黒の影なれば