あらすじ
旧道沿いにひっそりと佇む喫茶店【ハイドレンジア】。昭和レトロな雰囲気のお店のカウンターでは、二代目マスターの室龍之介(むろりゅうのすけ)が微笑みを浮かべてお客さまを出迎える。
落ち着きのあるどこか懐かしさを感じるお店の雰囲気と、マスターのこだわりが詰まった珈琲は訪れた人々の心に癒しの時間を与えていた。
天候の影響で客足が落ち着いていたある日、室が窓を叩く雨を眺めていると一人のサラリーマンが雨の中、傘もささずに店に飛び込んできた。
全身ずぶ濡れの男性をタオル片手に出迎え、中へと案内すると、ふと男性の足音に違和感を感じた。
足音が明らかに女性のハイヒールの音がしていたのだ。
明らかな異常を前に、室は気付かぬふりをして接客を続ける。
ー ヴゥゥゥ……
そうしているうちに段々と室の耳に携帯のバイブレーションのような不可解な音が聞こえてくるようになった。
ー ゔううぅぅぅ……っ!!
それは段々と大きくなって、周囲の音すら聞こえにくくなっていく。やがてその音の正体に気付いた時、室は思わず背中に寒気を感じて震え上がった……。
霊の姿は“視えない”が、霊の声を“聴く”ことができる室龍之介の物語。多くの女性を虜にするほどの甘いマスクの下に隠れた苦悩は珈琲のようにほろ苦い……。