あらすじ
優しくて、笑顔が素敵な彼。
私たちは、幸せだった。
あの夜までは――
彼の態度が少しずつ変わっていった。
束縛、無視、怒鳴り声。そして……暴力。
部屋の壁に、赤黒い跡がついた日から、
私は「逃げなきゃ」と思った。
でも、逃げても逃げても、
“彼”はいつも、私のそばにいた。
スマホの電源を切っても、SNSを消しても、
見えないところから、彼の声が響く。
「忘れるなよ。俺は、ずっとここにいる。」
誰にも話せない、心霊現象のような現実。
私はもう、“生きている彼”ではなく、
“彼の意識”に支配されている気がした――
……そう思っていたのに。
ある日、私の古い日記に、こう書かれていた。
「また、手を出してしまった。
あの顔を見ると、つい。」
記憶と記録が、噛み合わない。
夢に出てくる私は、笑いながら彼を殴っている。
本当に彼だけが加害者だったの?
本当に私だけが、被害者だったの?
そして彼もまた、
“忘れていた傷”と“消された記憶”を思い出しはじめる。
二人の記憶はねじれ、重なり、
やがて恐ろしい真実へとたどり着く――
「支配されていたのは、私?
それとも……あなた?」