あらすじ
都市の片隅、再開発された駅ビルの近くに立つ小さな公園。
そこは、かつて彼らが通っていた学び舎の跡地だった。
佐倉遼、29歳。
妻・水島梨乃と2歳の息子を連れ、母校である高校の創立記念式典に出席するため、思い出の場所を巡っていた。
小学校、中学校──そして、最後に訪れた高校で掘り起こされるタイムカプセル。
封じられていた“ひとつの手紙”が、彼らの心をそっと揺らす。
高校時代、遼は芸能活動をしていた美少女・一ノ瀬美月に密かな恋心を抱いていた。
けれど、傍にはいつも笑っている梨乃がいて、遼はその距離に気づかないまま日々を過ごしていた。
そんなある日、トラブルに巻き込まれた遼は、仲間たちの助けで救われるも、意識を失って入院する。
眠りの中で見た夢。そこには、自分を見つめ続けていた“もうひとりの誰か”がいた。
目覚めた遼は、病室で泣きながら眠る梨乃を見て、ようやく本当の気持ちに気づく。
美月は夢を追って芸能界へ、そして彼女と心を通わせていた三谷蒼は、数年後に殉職──。
再び集まった記念式典。
一冊の恋愛小説の間に挟まれたメッセージ。
それは、三谷が伝えられなかった想いだった。
時を越えて届く声が、彼女の心に、静かに灯をともす。
あの日、誰かを見ていた気持ちは、
きっと──今でも、どこかに残っている。