あらすじ
魔王は滅び、世界に平和が訪れた。
勇者カヴェーとその仲間たちは英雄として讃えられ、輝かしい未来が約束されていた。
だが、パーティの五人目、吟遊詩人のジャミールだけは、その栄光の輪から静かに姿を消す。
――これは、英雄譚のエンドロールの、その先で始まった、誰も知らないもう一つの物語。
五年前、崩れ落ちる魔王城で、ジャミールは一人の子供を見つける。
銀色の髪と猫の耳を持つ、魔王の血を引く最後の生き残り、ルゥ。
世界の敵であるその幼い命を見捨てられなかったジャミールは、英雄の称号も、仲間との絆も、そして胸に秘めたカヴェーへの想いも、すべて捨てて、ルゥと共に逃亡者となった。
それから五年。
吟遊詩人として日銭を稼ぎ、ルゥを我が子のように育て、ささやかだが穏やかな日々を送っていたジャミールの前に、運命は、最も会いたくて、最も会ってはいけない男を連れてくる。
「――ジャミール! ずっと、探してたんだぞ!」
魔族の残党狩りの任を受け、街に現れたのは、王国将軍となった元勇者カヴェーだった。
太陽のような笑顔で再会を喜ぶ彼に、ジャミールは嘘を重ねる。隣にいるルゥを「旅で拾った孤児だ」と。
何も知らないカヴェーは、ジャミールが自分を捨てて子供との生活を選んだのだと誤解し、嫉妬の炎を燃やす。
一方、ルゥは、一族を滅ぼした英雄カヴェーに、純粋な殺意を向けていた。
英雄の地位を捨ててでもジャミールを取り戻したい男。
英雄を憎みながらも、ジャミールに歪んだ愛情を抱く少年。
そして、二つの大きな想いの間で、嘘と秘密を抱え、心をすり減らしていく元吟遊詩人。
歪な三角関係の果てに、三人が辿り着く未来とは。
切なさと愛おしさが交錯する、BLファンタジー、開幕。