あらすじ
高校生の佐藤健太は、ある朝突然、自分の背中が他人のものに変わっていることに気づく。背中は小さく華奢で、左肩には見覚えのない傷跡があった。不安と混乱を抱えながらも、同じクラスの藤村美鈴だけに事情を打ち明けると、美鈴もまた「自分ではない誰かの記憶」や肩の痛みに悩まされていた。二人は次第に子供の頃の断片的な記憶、海辺の町や公園、幼い日の自分に似た子供達の姿を共有しはじめる。
やがて健太は、美鈴と小学生時代の夏に出会い、共に遊び、美鈴が怪我をした出来事や、引越しによる別れを思い出す。再会した今、忘れていたはずの記憶と痛みが二人を通じて蘇り、心の中に残った「もう一人の幼い自分」や「小さな美鈴」が現れる。二人は幼い頃の自分たちに再び向き合い、あのときできなかったきちんとしたお別れを果たすことで、健太の背中も美鈴の心も本来の自分へ戻る。
元の生活に戻った後も、二人は過去を大切な思い出として共有し、もう二度と離れ離れにはならないと誓う。月日は流れ、家族となった二人は、子供とともに再び海辺の町を訪れ、幼い自分たちを思わせる幻影を見送る。心と体を繋ぐ記憶の重なりが、今の幸せへと彼らを導いたのだった。