あらすじ
【これは、友情と恋の間で揺れ動いた、二人の10年間の物語】
高校のソフトテニス部で出会った、太陽みたいに明るい夏川樹(なつかわ いつき)と、月のように物静かな水瀬楓(みなせ かえで)。
前衛と後衛、正反対の二人はダブルスのペアを組んだことで急速に距離を縮め、いつしか互いを誰より大切な存在だと思うようになる。
週末の泊まり合い、一つのベッドで眠る夜、境界線のない無邪気なスキンシップ。
それはまぎれもなく「親友」としての時間のはずだった。
「可愛い」――。
中学2年の秋、樹は楓の無防備な寝顔に、友情とは違う感情の奔流を自覚する。
一方、楓もまた、樹が向ける熱を帯びた視線に戸惑い、胸をざわめかせていた。
やがて、抑えきれない想いが溢れた夜、二人は「親友」という境界線を越える。
しかし、その関係に名前をつけることはできなかった。
「好きだ。でも、恋愛とかよく分かんねえ。ただ、お前は特別なんだ」
「……樹だから、いいよ」
互いに彼女を作り、傷つけ、傷つき、嫉妬と安堵を繰り返す日々。
高校、大学、そして社会人へ。
時間と距離が二人を引き離しても、心の奥底ではいつも互いを求め続けていた。
樹の心には、いつでも楓がいる。
楓の世界は、樹を中心に回っている。
そんな歪で、でも純粋な関係を続けたまま、二人は25歳になった。
「普通の幸せ」という名の結婚を目前にした樹と、彼の幸せを願いながらも静かに心を痛める楓。
「俺たち、なんなんだろうな」
10年間、答えの出なかった問い。
曖昧な関係を続けた二人が、ついに下す決断とは――。
友情、愛情、執着、依存。
どんな言葉でも足りない、ただ一つの「唯一」を求める、切なくも美しいラブストーリー。
あの頃の青い痛みを覚えている、すべての人へ。