あらすじ
明治の末、京都――
雪深き町で生まれた少女・白川綾乃は、旧士族の娘として奉公に出され、名もなき下働きとして日々を生きていた。
奉公先で出逢ったのは、品格と静謐さを湛えた華族の子息・湊。そして、後に綾乃の筆を導く運命の記者・彰馬。
ひとたび運命の歯車が動き出すとき、彼女の言葉が、まだ声すら持たぬ女たちの代弁となる――
「名もなき誰か」に向けて綴った綾乃の文章は、やがて新聞を通して社会を揺らし、静かな革命の火種となってゆく。
しかしその道は、決して平坦ではなかった。
恋した人との別れ、蔑まれた過去、病に蝕まれていく大切な家族――
己の想いと引き換えに、誰かの未来を守らなければならない時代に、彼女は何を信じ、何を捨てたのか。
「言葉には、誰かを救う力がある」
彰馬の言葉に導かれた綾乃は、筆の向こうに見える景色へと歩き出す。
それは、死を超えてもなお継がれていく、想いの連なり。
そして――
かつて叶わなかった恋もまた、別のかたちで再び綾乃の傍に寄り添う。
己の意思を持ち、支え合うという新たな絆を紡いで。
季節は巡り、椿が咲く。
宵の闇をくぐり抜けたその先に、綾乃が見つけた“咲くもの”とは――
*作品に登場する、場所、人物、事件はすべてフィクションです。
*話の無断転載、複写を禁止致します。
*表紙は表紙メーカーさんで作成しました。