あらすじ
2025年、初夏。
書店でのアルバイトを終えた私にひとりの刑事が近づいて来た。
「こちらのお店で店長をしておられる、氷見さんを探しています」
氷見店長はつい先日お子さんをなくされたばかりで、現在は休職中。私と店長の間に個人的な付き合いはなく、当然居場所など把握していない。
聞けば、店長は自宅マンションにて近隣住民から苦情の出る騒音トラブルを起こしているという。
「怖かったんです」
と刑事は言う。「この際だから正直に言います。氷見さんの家が、本気で怖いと感じたんです」
気になった私は刑事に乞われる形で店長の自宅を訪れた。だが、
「何……この匂い」
私は知らず知らずのうちに、思いも寄らない事件の入口へと足を踏み入れてしまっていた。
その頃、かつて共に死線を潜り抜けた私の親友のもとへも、とある人物が現れていた。
「いきなり来るんだ?」
「苦労しましたよ。なかなか見つけられなくて」
その人物は恭しく頭を下げ、こう続けた。
「とある山間部のキナ臭い村の調査に際し、是非ともあなたに御尽力を賜れないものかと、上司が申しております」
「ヤマダさんが?」
「はい」
「嘘だと思うなぁそれ!」
拝み屋を志す私と、殺し屋から足を洗った友人。
この夏、私たちが巻き込まれた事件は一体どんな結末を迎えるのだろうか ─── ?
そして私はこの時まだ、親友の身に起きている異変に少しも気がついてはいなかった。彼女がひとりで何を思い、何を抱え、何と戦っていたのかを……まるで。