あらすじ
垣原瞬(かきはら しゅん)は、恋に落ちるのは得意だが、愛を続けるのが苦手な高校生だ。
刹那的な高揚感を「恋」と信じ、その熱が冷めると、相手の心が自分に縛られていることすら面倒になる。
彼は、そんな身勝手な恋愛と、後味の悪い別れを繰り返していた。
「どうして、僕はいつもすぐに飽きてしまうんだろう?」その答えの出ない問いを、心のどこかで持て余しながら。
そんな彼の前に現れたのが、太陽のように笑う、前原美影(まえはら みかげ)だった。
誰に対しても平等で、自分の世界をしっかりと持つ彼女は、瞬にとって最高の「ゲーム」のターゲットに思えた。
駆け引きを楽しみ、時間をかけて、この難攻不落の彼女を自分に夢中にさせてみせる。
そう決意して、軽い気持ちで告げた「付き合ってほしい」という言葉。
しかし、彼女の返事は、瞬の完璧なシナリオを根底から覆す。
「いいよー!」
屈託のない笑顔と、秒速の承諾。恋愛というゲームの盤上から、いきなり突き落とされた瞬の、戸惑いと、焦り、そして、未知の感情の物語が、ここから始まる。
連絡を絶っても、他の女子と親しげにしても、美影は、決して、瞬が望む「恋人らしい」反応を見せない。
嫉妬も、束縛も、涙もない。
その、あまりにも穏やかで、どこまでも自由な彼女の姿に、瞬の心は次第に追い詰められていく。
いつしか彼は、自分がかつて軽蔑していたはずの、相手の愛情を試すような、惨めで、独善的な行動を繰り返すようになっていた。
「お前、本当に、俺のこと好きなのかよ!」
ついに、彼がぶつけた絶叫。それに対する彼女の答えは、瞬が今まで信じてきた「恋愛」という価値観そのものを、静かに、しかし、完全に破壊していく、深遠な哲学に満ちていた。
燃え上がるような一瞬の「恋」と、穏やかに育んでいく「愛」の、本当の違いとは何か。
過去の恋愛で深く傷つけた元カノとの対峙を通して、少年は、自らの未熟さと、本当の意味で誰かを大切にすることの重さを知る。
これは、回り道ばかりだった二人が、幾多のすれ違いと涙の先に、ようやく、二人だけの温かい木漏れ日を見つけるまでの、切なくて、どこまでも優しい、愛の物語。