あらすじ
知識は光ではなく、闇を照らす引き金だった。
大学3年の春、教育学部数学科に通う結城拓真は、就職活動の波に背を向けるように、友人とともに海外旅行へと旅立つ。
「どうせなら誰も知らない場所へ行こう」
彼らがたどり着いたのは、地図にも記されていない孤島——フィエルド島。
かつて航海日誌にわずかにその名を残すこの島には、文明の影すら届かない、静かな集落があった。
言葉も数も知らない島の人々。
時計も学校もなく、誰も「昨日」や「明日」を語らない。
拓真はそこで思い立つ。
「ここに"教育"をもたらそう。理性と秩序を与えるんだ」と。
だが、数を教えた翌日、一人の少女が家族を数えて泣き叫び始めた。
時間の概念を伝えた少年は、時計を壊して空を睨むようになった。
文字を覚えた大人たちは、自分の名前に怯え始めた。
やがて島の奥に佇む「教師」を名乗る者が現れ、拓真に囁く。
「この島は、概念という呪いに耐えられない。」
教育は本当に人を救うのか?
知識は本当に善なのか?
数式よりも狂気が支配するこの島で、拓真は"教えること"の本当の意味と、背後に潜む恐怖に直面する。
教育の光が、闇を深くすることもある。
これは、ある青年が信じた「学び」が、地獄への扉を開いてしまった物語。