あらすじ
「『もう戻ってくるなよ』か……。けっ、他人事だから言えんだよ」
そう悪態をついた男。雑草がちらほらと生えている砂利道に唾を吐き捨て、肩を怒らせながら歩いていた。刑務所を出たばかりのその体には自由の風が妙にこそばゆく、不快だった。
「今からまともな人生なんて送れるわけねえだろうが。また何かやってやらあ……」
そう息巻きながら、転がっていた石を蹴り飛ばす。土埃が舞い、靴とズボンの裾にかかった。石は横へ逸れ、道の脇に生い茂る青々とした雑草の中へ消えていった。郊外の一本道。まだ街まで遠い。男はあくびをし、伸びをした。
そのとき、黒塗りの車が静かに横に滑り込み、ぴたりと停まった。
運転席の窓が下がり、中からスーツ姿の男が顔を覗かせた。