あらすじ
渡会哲人は、夢を見る。
ただそれは夢というには、あまりにもリアルで苦しみに満ちていた。おびただしい血に染まった街並みに、鼻の奥を刺すような腐った臭い。五感が訴えかける。目を逸らすな、と。
だけど哲人は、それをタチの悪い夢だとしか思えない。
何故ならそこにあった光景は、この世のものとは思えないそれだったから。異形のバケモノが地を這いながら、唸り声を上げていた。四肢が異様に変形し、黒化したそいつは赤い眼を剥き出しに叫ぶ。
『タスケテ……テツ……!』
――痛い、痛い痛い痛い痛い。
全身から血のような液体を噴き出しながら、哲人に向かって訴えていた。彼はそれを見てどうしようもなく立ち尽くし、どうしようもなく涙を流し、無力なままに一つの名前を口にする。
『陽菜……!』――と。
それは哲人の幼馴染みの少女の名前。
だが夢に見る彼は、どうしてバケモノを陽菜と呼ぶのか理解できなかった。
その直後、一発の銃声。
そして――。
『――駆逐、完了』
また、常識ではあり得ない光景が映るのだ。
一人の見知らぬ少女が、バケモノの首を切断してそう口にする。
これは常識の埒外に在る者たちによる抵抗の物語。