あらすじ
四十八歳の聡が、若かりしころに友人たちと過ごした海岸通りの思い出を辿る物語。免許を取ったばかりの十八歳の頃、彼らは海岸沿いのハンバーガーショップに集い、小高い丘で夜景を見ながら夢を語り合った。
「春の夜の夢の浮橋とだえして 峰に別るる横雲の空」という西行の和歌が示すように、当時の友人二人はすでに他界し、あの頃の夢や希望は途切れた浮橋のようだ。認知症の母が息子の知らない記憶を持ち、かつてのハンバーガーショップは形を変えて存続していることに気づいた聡は、人生の儚さと継続性を同時に感じる。
絵画のような海岸線—朝の真珠の輝き、昼の群青色の絨毯、夕暮れの錦絵のような彩り、夜の銀の道—を背景に、聡は過去と現在を行き来しながら、夢が途切れるのは終わるからではなく、形を変えて続いていくからだと悟る。浮橋が一つ途切れても、別の浮橋がどこかで繋がっているという希望を胸に、聡は再び海へと向かう。