あらすじ
春の陽気が柔らかな風に乗って教室の窓から流れ込む四月。
桜の花びらが校庭に散るころ、篠原まことは新しい中学校生活に胸を膨らませていた。
華奢な身体に中性的な顔立ち。
透き通るような白い肌と、どこか儚げな瞳は、まるで絵画から抜け出した少年のようだった。
しかし、その繊細な美しさは、クラスメイトたちの好奇心を歪んだ形で引き寄せてしまう。
入学して1ヶ月。
早くもまことはクラスの中で孤立していた。
最初は小さな悪戯だった。
教科書が隠される。机に落書きされる。やがてそれはエスカレートし、休み時間には男子生徒たちに取り囲まれ、嘲笑と軽い暴力が日常となった。
「女みたいだな、篠原」
「お前、男だろ?」
そんな言葉が、鋭い刃のようにまことの心を切り刻んでいった。
ある放課後、誰もいない教室の片隅で、まことは膝を抱えてうずくまっていた。涙はとうに涸れ、ただ胸の奥に重い虚無が広がるだけだった。
夕陽がカーテンの隙間から差し込み、彼の細い指をオレンジ色に染める。その時、廊下から静かな足音が近づいてきた。
通りすぎるかと思っていたが、足音は教室の前で止まり、その主は半ば開いたドアからまことに声をかける。
「篠原まこと君……だったよね?君………いじめられてるんだ?」
柔らかく、しかしどこか冷たく響く声。まことは顔を上げた。
そこに立っていたのは、誰もが知る少女――神崎麗奈だった。
大企業の令嬢であり、文学のコンクールで金賞を受賞した誰もが知る学校のスター。
長い黒髪が背中で揺れ、深紅のリボンが制服に映える。
彼女の瞳は、まるで夜の湖のように深く、吸い込まれそうな輝きを放っていた。
「ねぇ……助けてあげようか?」
彼女の言葉が彼の運命を弄ぶ引き金となった。