あらすじ
星間標準暦3451年。銀河を揺るがした《サイレント・ウォー》終結から7世紀。宇宙が退屈なほどの平和を謳歌する時代。
かつて伝説の《星巡りの旅団》の一員として戦場を駆け抜けた、ほぼ無感情のアンドロイド、ユニット734――通称ナナ。彼女は、数百年を共にした最後の戦友であり、旅団のリーダーだったヒューメルの静かな死を看取った。
ヒューメルの死と、彼の遺した言葉、そして仲間たちの不可解な行動(トリックスター・ザックの悪戯、寡黙なゴルドのプラモ入門?)。それらは、1000年以上稼働してきたナナの論理回路に、これまで無視してきた問いを投げかける。「彼らの短い人生に、あの旅に、意味はあったのか?」「私は、彼らのことを何も理解していなかったのではないか?」
答えを探すため、ナナは数世紀ぶりに旅に出ることを決意する。かつて《星巡りの旅団》が巡った星々を再び訪れ、彼らが何を見て、何を感じ、何を遺したのかを確かめるために。
ナナの旅には、ヒューメルの曾孫で古代技術を学ぶ真面目な少女アリアと、ザック最後の弟子である気弱な天才メカニックのジンが同行することになった。世話焼きのアリアはナナの「生活インターフェース」兼監視役となり、ヘタレなジンは旧式宇宙船《リトル・コメット》の操縦と整備を担当する。
最初の目的地は、ヒューメルが「始まりの場所」と呼んだ砂漠の惑星サンドレイク。そこで一行は、変わり果てた景色、たくましく生きる人々、そしてナナの「合理的すぎる」親切心が引き起こすトラブル(井戸の最適化失敗など)に直面する。しかし同時に、長老の語る伝説から、ヒューメルたちがデータ記録には残らない「希望」や「助け合いの精神」を確かに遺していたことを知る。
非効率で、非合理的で、理解不能な「感情」や「文化」。それらに触れながら、ナナはほんの少しずつ、かつての仲間たちと、彼らが守ろうとしたものの意味を理解し始める。
ほぼ無感情のアンドロイド・ナナと、不器用で人間くさい仲間たち。これは、忘れられた過去の足跡を辿り、星々の記憶を拾い集めながら、「心」とは何かを探していく、宇宙の片隅を巡る、たぶんちょっとおかしな再生と発見の旅の物語である。次の目的地は、ザックが「銀河一の酒がある」と豪語した惑星アクアリア。果たしてどんな出会いと騒動が待っているのか――。