あらすじ
とある医療系の専門学校で噂される、ひとつの怪談。
——「旧病棟に、消えたはずの生徒が出るらしい」
監視カメラに映るぼんやりとした影、
夜な夜な鳴るはずのないシステム音、
そして、消去されたはずの生徒のログイン記録——。
その不可解な現象の調査依頼を受け、探偵は「電子カルテ講師」として学校に潜入する。
彼の傍らには、やたらと軽口を叩くサポートAI・エコー。
校内では、教育支援AI「アル」が生徒の学習と生活を静かに管理していた。
だが、この幽霊騒動には、ただの心霊現象では語れない“違和感”があった。
まるで、誰かが——忘れてはならない何かを、無理に思い出そうとしているような。
謎を追う中で探偵は、一人の女生徒・ミサキと出会う。
彼女は数年前に亡くなった“ある生徒”のことを知っていた。
誰も語らず、記録にも残されていないその存在に、強い疑念と喪失を抱いて——。
記録とは、真実か。
記憶とは、存在の証明か。
そして、AIにとって“忘れる”とはどういうことなのか。
この物語は、幽霊の正体を暴くサスペンスでも、ただのホラーでもない。
“記録に残らなかった声”が、確かに誰かの中に在り続けるという、
ひとつの静かで切ない《存在》の物語である。
人工知能が日常を支える時代。
記録されなければ存在しない、とされるこの社会のなかで、
“忘れられた存在”はどこに向かうのか——。